COLUMNコラム
金の相続税対策とは?財産としての金のメリットや相続税の計算方法など解説!
金を保有することは相続税対策になるといわれています。金は他の資産と比べてどのようなメリットがあるのでしょうか。また相続人になったとき、相続税はどれくらいの金額を支払わなければならないものなのかを知っておくと慌てずに済むでしょう。
本記事では、財産としての金のメリットや、相続税の計算方法、金を相続する際の注意点などをご紹介します。
目次
金は財産としてもメリットが多い
財産の一部を金で保有しておくことには、多くのメリットがあります。金は金融資産や不動産と比べて、財産としてどのような違いがあるのでしょうか。ここからは、金の具体的な特徴やメリットをご紹介します。
換金性に優れる
金は換金性に優れていることが特徴の一つです。金は実物資産であり、世界中で価値が認められています。歴史的に見ても、金は紀元前の時代から権力や富の象徴として人々の中で流通してきました。地球上に存在する金の埋蔵量には限りがあるため、希少性が高いことも金の人気につながっています。
また金を手に入れたいと考える人は世界中にいるため、どこでも売却が可能です。日本国内でも、金の売買を行っている企業は数多くあります。不動産の場合は、売却したくてもなかなか売り手がつかない場合や、希望価格で売却できない場合があるでしょう。その点、金であれば多くの需要があり、売却しやすいです。
また金には大まかな相場があるため、大きく値崩れしにくい安定感もあります。
固定資産税などランニングコストがかからない
土地やマンション、住宅などの不動産で資産を所有している人も多いです。不動産を所有している場合、それぞれの不動産に対応した固定資産税を毎年支払う必要があります。長年不動産を所有していれば、毎年支払う固定資産税の合計額は、多大なものとなるでしょう。
それに対して、金は実物資産であって不動産ではないため、保有していても固定資産税はかかりません。そのため自宅で金を保管する場合はランニングコストがかからない点がメリットです。ただし、金を貸金庫や金の販売業者に預ける場合は、決まった保管料がかかることを認識しておきましょう。
分割が容易
金は遺産相続の際にもメリットがあります。財産を遺して亡くなった人(被相続人)が所有していた不動産の場合、複数の相続人がいると分割しづらく、相続人の間でトラブルが起きやすいということが難点です。不動産の売却益を分割しようと試みたとしても、不動産はすぐに売れるとは限りません。
一方、金は小さな単位で所有していても大きな単位で所有していても、重さが同じであれば価値は同じです。そのため、遺産相続の争いをできるだけ避ける目的で、500gや1kgなど、小さな単位に分割して所有しておくこともできます。
金の相続税対策
金は不動産とは異なり、購入時に登記をするわけではありません。そのため被相続人が亡くなった後に相続財産を整理していたときに金を所有していたことが発覚する場合もあるでしょう。
相続税法第2条には「相続または遺贈により取得した財産の全部に対し、相続税を課する」と定められています(※)。金は相続税の課税対象となることを、まずは押さえておきましょう。
※出典:e-Gov法令検索.「相続税法」.https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000073 , (参照 2024-05-01).
相続税の課税対象となる金の種類は?
金と一口にいっても、その形状はさまざまです。相続税の課税対象となる金の種類には、どのようなものがあるのでしょうか。ここからは、一つずつご紹介していきます。
金地金(インゴット・ゴールドバー)や金貨
金といったときに、まず思い浮かぶ代表的なものが金地金(インゴット・ゴールドバー)と呼ばれるものでしょう。インゴットは英語で「ingot」と表記され、日本語訳にすると「金属の塊」という意味です。精製した金属をインゴットケースと呼ばれる鋳型に流して形作ったもののことを指します。
なお「インゴット」という言葉自体は金の塊だけに限られたものではありません。銀やプラチナ、パラジウムなどでできたインゴットもあります。インゴットは細長い形をしているため、英語では「バー」と呼ばれ、中でも金のインゴットはゴールドバーと呼ばれます。
また国内で記念硬貨として発売された金貨や外国で発行された金貨も、金を使っているものと見なされ、課税対象です。
純金積立
純金積立も相続税の課税対象です。純金積立とは投資手法の一つで、毎月一定金額の金を継続して購入します。毎月決まった金額を投資するのが定額積立、決まった重さの金を購入するのが定量積立です。
純金積立は、地金商や証券会社などで始めることができます。購入時の総額に対して売却時の総額が高い場合、利益が生まれるものです。必要なコストは純金積立を取り扱っている会社によって異なっており、購入時や売却時の手数料、保管料や年会費がかかる場合があります。
装飾品や美術品
装飾品や美術品は、相続税の課税対象です。金の使い道として特に有名なのが装飾品ではないでしょうか。指輪やネックレスなどのアクセサリー、時計などにも金は使われています。
美術品に含まれるものは、絵画、陶芸、彫刻などさまざまです。相続財産の美術品が想像しているより価値が高い場合や、値上がりして価値が上がった場合、相続税が莫大な金額になる可能性があります。美術品は一見しただけでは価値が分かりにくいだけに、どれくらいの資産価値があるかを正確に把握しておくことが重要です。
日常的に礼拝していない仏具や祭具
国税庁によると、仏壇、仏具、神を祀る道具など日常礼拝をしているものに関しては、相続税はかかりません。ただし、骨董的な価値があるものなど、投資の対象になるものや商品として所有しているものは相続税の対象になります(※)。
純金で作られた仏壇、仏具、神を祀る道具など、社会通念上認められる金額を超えた華美なものに関しては、相続税の対象となる可能性がある点に注意が必要です。例えば、金の仏像を購入して蔵にしまっていた場合や、相続税対策として被相続人が亡くなる直前に金の仏像を購入していた場合は、相続税の課税対象となり得ます。
※参考:国税庁.「No.4108 相続税がかからない財産」.https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4108.htm , (参照 2024-05-01).
金の相続税の計算方法
相続対象の財産から葬儀費用や借入金、死亡保険金の非課税分を差し引いた金額が、相続税の課税対象となる遺産総額です。
相続税は、遺産総額から基礎控除額を差し引いた金額に課税されます。遺産総額が基礎控除額を下回っている場合は、課税されません。基礎控除額の計算式は以下の通りです。
- 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
例えば、法定相続人が妻と子ども2人の場合の基礎控除額は、以下の計算式で算出できます。
- 3,000万円+600万円×3人=4,800万円
また課税遺産総額が1億円だった場合、妻と子ども2人の法定相続分は、妻が2分の1、子ども2人はそれぞれ4分の1ずつになるので、妻が5,000万円、子ども2人はそれぞれ2,500万円です。
相続税の税率は課税価格によって異なり、5,000万円に対しては20%、2,500万円に対しては15%となります。そのため課税価格が5,000万円以下の場合は200万円、3,000万円以下の場合は50万円の控除が適用されます(※)。これらを基にそれぞれの相続税額を計算すると、以下のように算出可能です。
- 妻:(5,000万円×0.2)-200万円=800万円
- 子ども(1人当たり):(2,500万円×0.15)-50万円=325万円
妻と子ども2人の相続税の合計は「800万円+325万円×2」で1,450万円となります。
※参考:国税庁.「財産を相続したとき」.https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_5.htm , (参照 2024-05-01).
こんなときどうする?金相続の注意点
ここからは、金を相続する場合に知っておきたい注意点をご紹介します。
小さなもの、高価ではない金製品は?
金が使われたアクセサリーも相続税の課税対象となりますが、指輪など小さいものは1つ当たりの金額が高額にならない場合もあるでしょう。目安として、1つ当たりの金額が5万円以下の場合は個別に相続財産として評価計上しないことが一般的です。他の家財などと一緒にまとめて計算し「家財一式 〇〇円」などと記載します。
金の取得費(購入価格)が分からない場合は?
相続した金製品を相続人が売却した場合、金製品を取得したときから売却したときまでの所有期間によって短期譲渡所得と長期譲渡所得に分かれ、5年以内は短期、5年を超えるときは長期になります。
短期譲渡所得の計算式は、以下の通りです。
- 短期譲渡所得の金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-50万円(特別控除)
長期譲渡所得はその半額になります。なお、取得費は金製品の購入代金、譲渡費用は金製品の譲渡時にかかる手数料です。
金の取得費(購入価格)が分からない場合は、譲渡によって得た収入の5%相当額が取得費になるルールがあります。例えば、2,000万円で金製品を売却した場合、20年前に1,500万円で購入した領収書があれば、長期譲渡所得として課税譲渡所得は以下の通り算出可能です。
- (2,000万円-1,500万円-50万円)×2分の1=225万円
領収書がない場合、取得費は「2,000万円×5%=100万円」で計算され、課税譲渡所得は「(2,000万円-100万円-50万円)×2分の1=925万円」になります。
このように取得費が不明だと課税所得が増える可能性があるため、領収書は必ず残しておきましょう。
相続税に時効はある?
相続税は法定申告期限から5年経過すると時効になり、国は当該相続人に対して税金を払うよう通告することはできません。ただし、相続人に悪意がある場合、時効は7年に延長されます。
法定申告期限とは、被相続人の死亡したことを知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から数えて10カ月後です。相続税の時効起算日は、法定申告期限の日となります(※)。
悪意には、相続税を払わなければならないことを知っていたのに払っていなかった場合、申告後に新たに被相続人の金製品を見つけたが再申告しなかった場合などが当てはまります。
※参考:国税庁.「No.4205 相続税の申告と納税」.https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm , (参照 2024-05-01).
申告しなくてもバレない?
「自宅に金をこっそり隠しておけば、相続税の申告をしなくてもバレないのではないか」と考える人がいるかもしれません。しかし金地金にはシリアルナンバーが付いており、購入者情報が紐付けられているため、税務署がシリアルナンバーを確認すれば、誰が金を保有しているかがバレてしまいます。
また、金取引では本人確認書類による手続きが行われる上に、200万円を超える金取引をする場合、販売業者から税務署への支払調書の提出が義務付けられていることも知っておきましょう。
金を相続したことを申告しないとバレてしまうだけでなく、ペナルティとして通常より高い税金を払わなければならなくなる恐れもあります。そのため、きちんと申告するようにしてください。
相続資産としても注目される金
金は分割しやすく、遺産相続時に親族間のトラブルになりにくいことなどから、相続資産として注目されています。遺産分割のために被相続人から譲り受けた金の売却を考えている人もいるでしょう。
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